開業時の提出書類をチェック!(個人事業主編)

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開業時の提出書類をチェック!(個人事業主編)

個人が事業を開始した場合に必ず提出すべき書類は2つ!

1)個人事業の開業届出・廃業届出等手続(いわゆる開業届です)
2)青色申告承認申請書

所得税法 第229条 開業等の届出

居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から1月以内に、税務署長に提出しなければならない。

所得税法第229条

上記オレンジマーカーには「不動産所得、事業所得、山林所得を生ずべき事業を開始」した場合とありますので、例えば給与所得や雑所得、配当所得などしか生じない個人は当然ながら開業届を提出する必要がありません。

なお事業を開始した場合に提出する開業届は、納税地を所轄する税務署への提出はもちろんのこと、都道府県税事務所と市町村役場にも提出する必要があります。東京都23区については都税事務所への提出のみで、区役所への提出は不要となっています。

事業を開始していなければ開業届は不要?

「又は」以降のグリーンマーカー部分に着目してください。仮に不動産所得、事業所得、山林所得が生じていなくても、これらを行うための「事務所や事業所を設置した場合」とも記載がありますので例え事業を開始していないくても、事務所等を設置している場合には開業届を提出する必要があります。

開業届を提出しないとどうなる?

開業届出を出さなくても罰則はない

個人で事業を開始したときは前述のとおり1か月以内に開業届を提出する義務があります。しかし、うっかりして開業届を提出することを忘れてしまったとしても、実は罰則はありません。
「じゃあわざわざ面倒くさいから開業届なんて出さなくてもいいじゃん」
と思われる方もいるかもしれませんが、罰則はなくてもデメリットはあります。

青色申告として申告できない

開業届を提出しない場合には、青色申告承認申請書に記載すべき「開業日」がないため、承認されない可能性が高い若しくは開業届を出すように指導を受けてしまいます。つまり開業届を出さなければその後の確定申告書を青色申告として申告できないため、青色申告特別控除(最大65万円)の適用を受けることができません。これは開業届を提出しない最大のデメリットと言えるでしょう。理由があって青色申告をしないという以外は、開業届と青色申告承認申請書はセットで提出するといいでしょう。

事業者名の口座開設が難しい

個人事業主の場合、金融機関によっては屋号名義の口座を開設することが可能です。屋号名義の口座で取引することにより、個人名義の口座に比べて信用が増すことが期待されるためです。
このように事業者名で口座開設したい場合には開業届の控えの提出を求められることが多く、提出をしていない場合には開設を断られることもあるようです。

状況によって提出が必要となるもの

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

従業員を雇用して給与等を支払うことになる場合などは、給与等の支払事務を取り扱う事務所等を開設したことを所轄税務署長に届け出る必要があります。事務所等を移転又は廃止した場合にも必要となる手続きです。

青色事業専従者給与に関する届出書

個人事業者の場合、親族に対する給与は必要経費とはならず、税金を計算する上で所得から控除することができません。しかし、青色申告をしている事業者は、この届け出をして一定の要件を満たすことで、親族に対する給与も必要経費に算入することができます。

所得税の減価償却資産の償却方法の届出書

減価償却資産の償却方法は一般的には定額法と定率法で償却を行いますが、所得税法での法定償却方法は定額法と定められています。法定償却方法とは、事業者が特に償却方法を届け出なかった場合の方法をいいます。つまり何も届け出なければ定額法と言って、取得した資産の金額を一定期間にわたって均等的に必要経費にしていくイメージです。もし定率法で償却をしたいときはこの届出を行う必要があります。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

従業員又は青色専業専従者に対して給与を支払う場合には、個人事業主は源泉徴収をしなければなりません。源泉徴収をした源泉所得税は、原則として徴収した日の翌月10日までに税務署に対し毎月納付する必要がありますが、この申請をして承認を受けることにより納付するタイミングを年2回(7月と1月)とすることができます。なおこの申請は、給与を支払う従業者が常時10人未満である事業者が行うことができます。

消費税課税事業者選択届出書

通常、開業後2年間は消費税の納税義務はありませんが、この届出をすることにより開業年から消費税の納税義務者となります。

「あえて消費税を納めたい人なんているの?」と思われるかもしれませんが、実はその逆で還付を受けるためなのです。

事業としての売上は消費税の対象となりますが、逆に仕入や経費を支払った金額にも消費税は含まれていますよね?消費税は売上などに含まれる受け取った消費税から仕入などに含まれる支払った消費税の差額を納めるものですので、もし支払った消費税の方が多い場合には、還付を受けることができるのです。しかし、消費税の納税義務者でなければそもそも納税も還付も受けることができないので、例えば開業年に大きな設備投資を予定している場合などはこの届出をして消費税の還付を受けることを検討するのです。

まとめ

個人の方が事業を開始したときは「開業届」と「青色申告承認申請書」の2つは提出する、と覚えておくと良いでしょう。記載する内容はそれほど難しいものではありませんので、十分ご自身でも提出することは可能かと思います。もし不安であるとき、記載する内容がよくわからないときは専門家である当事務所が作成、提出することも可能です。お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

税理士事務所ゆたかシナジーパートナーズ代表。税理士業界では少数派の30代若手税理士。法人税法、消費税法をはじめ、中小企業・個人事業者を中心とした税務コンサルティングが得意。これから新しく事業にチャレンジする方を応援する創業支援プロジェクトにも力を入れています。

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